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あなたの世界はひとつでも本の世界はたっくさん!

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「望み」

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「望み」
雫井脩介(しずくいしゅうすけ) 作 / 牧野千穂 装画
角川書店(2016年) 単行本(ハードカバー) 1600円
344ページ
角川文庫(2019年) 680円 397ページ

*子どもの気に入り度*★★★★

*ふりがな状況*
「また、そのあどけない顔に、青く内出血したようなあざを二つ三つ浮かべているのも、落ち着きの悪さに拍車をかけている。喧嘩(けんか)でもしたのだろうか、先週末、外泊して帰ってきたときに付いていた。一登や貴代美が何をしてそうなったのか訊(き)いても、曖昧(あいまい)な返事ではぐらかすだけだった。」(P16より)



「望み」_b0334846_22321152.jpg*あらすじ*
一登が提案する「家族の在り方」を尊重した家づくりは顧客からの評判もよく、建築家としての彼の仕事は順調だった。しかし自身の家庭内では問題が起きていた。ある時から長男の規士(ただし)が家に帰ってこなくなり、連絡も取れなくなってしまったのだ。そんな時、規士の知り合いと思われる少年が、リンチを受けた末に死亡した状態で発見される。警察とマスコミが動き出す中、次第に親の知らなかった規士の人間関係が明るみになり、家族の中で不安と疑念が渦巻き始めた。そしてもう一人、関係者とされる少年が何者かに殺された。遺体の身元が判明するまで警察は何も教えてくれない――。殺された少年は息子なのか!?それとも息子が殺人犯なのか!?


*補足*
グループの人数、目撃者の人数から言うと、残りの二人は殺された少年と殺した側の少年なんです。となると、規士はどちらかの一人、ということになります。息子が人殺しなどするはずがない――と信じる父親。息子は死んでない、必ず生きている――と願う母親。それは言い換えると、息子は死んでしまっていると認める父親と、息子が殺人犯であると受け入れる母親、ということになります。同じ子を持つ親としてこの本を読むと、父親と母親、どちらの気持ちも理解できるだけに、二人の「望み」がどちらしか叶わない事実がラストまでの緊張感を高めています。そして規士が事件に巻き込まれた本当の理由。規士自身の「望み」を知ると、もう何とも言えない気持ちになりますね・・・・。2020年に映画化。


*子どもの反応*
次女(高2)が読みました。「バッドエンドだったねぇ~」と。次女の望みは規士が生きていて、尚且つ事件と無関係であって欲しかったようです。次回はほのぼのハートフル系をすすめてみます(笑)。










記事の更新ペースがすっかり遅くなってきました。

子どもたちが忙しくなって本を読むペースが遅くなってるからなんですが

この調子だとこのブログも本年度で終了しそうです。。。

まだまだ読んで欲しい本沢山あったんだけどな。







# by narimi1020 | 2023-04-16 23:22 | 一般文芸*ミステリー・サスペンス | Comments(0)

「空飛ぶ広報室」

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「空飛ぶ広報室」
有川浩(ありかわひろ) 作 
幻冬舎(2012年) 単行本(ハードカバー) 1600円
462ページ

*子どもの気に入り度*★★★★

*ふりがな状況*
「自衛隊は――空井は常にそういう扱いを受けている存在なのだ。リカはまだ国防論など租借(そしゃく)しきれていない。ただ、比嘉が以前言ったことが思い出された。被害の前例を作らないと出動できないというのはあまりに悲しい。被害者を実績にしないために広報活動をしている。」(P345より)





「空飛ぶ広報室」_b0334846_21074524.jpg*あらすじ*
航空自衛隊航空幕僚監部広報室に勤務する空井は元戦闘機パイロットだ。憧れのブルーインパルスに乗れることになった矢先、交通事故によりパイロットの資格を剥奪されてしまったのだ。広報としては新米の彼は、先輩たちに指導を受けながら業務に励んでいた。ある日テレビ局の長期取材が入り、一人のディレクターが広報室を訪れた。稲葉リカ。攻めを武器にしていたのが仇となり、報道記者を降ろされたばかりだった。記者としての名残か、自衛隊に対して否定的な態度を強く見せるリカに、空井はこういう人に理解してもらうために広報はあるんだと悟る。しかし、考えた企画もあらゆる壁に阻まれ上手くいかない。一般の人たちと関わるようになり、自衛隊の認知のされ方の現実を痛感しつつも、空井は広報官としての成長をしてゆく。一方リカも広報室に通いつめ、自衛隊についての知識を深めながら、取材対象を記号のように扱っていた過去から、空井たち室員に影響され変わっていくのだった。



*補足*
空井は日常生活では全く問題なく生活できるにも関わらず、輸送機などのパイロットにも就くことができませんでした。広報室長の鷲阪は、荒れることなく淡々と事実を受け入れる空井の殻を破るため、あえて問題児であるリカのアテンド役に当てます。室長の思惑通り、お互いに刺激を受けた二人は心を開いていきした。恋の方は空井がヘタレすぎてアカンです。リカは当初、自衛隊のことを軍と言ってしまったりと、知識はほぼ無いに等しい状態でした。リカは私たち読者の代役でもあります。空井が丁寧に教えてくれるので、読者が自衛隊のことをあまり知らなくても問題ありません。彼ら以外にもライバル同士の比嘉と片山、夫婦(ではないが)喧嘩ばかりしている柚木と槙たちの関係の変化にも注目です。有川氏の作品は周りの登場人物の物語もしっかり描いてくれるのがいいですね。その分、本が分厚くなるんですが。



*子どもの反応*
次女(高2)が読みました。ドラマ化されているので「人気なんだ~!」と興味をもってくれました。面白かったそうです。







あとがきにも書かれているのですが、この本が出版される直前に東日本大震災が起きました。

その後加筆され、「あの日の松島」と題し、空井が経験した震災の様子が取材をしたリカを通して描かれています。

この本の出版自体が「航空自衛隊航空幕僚監部広報室」からの売り込み企画なんだそうです。

「航空自衛隊をネタに本を書きませんか」と提案された広報室長がいらっしゃったんですね!

おそらく広報室が舞台になるとは思っていなかったのでは!?

それを思うと、表装の写真が気になります。

広報室では戦闘機の撮影のため、いろいろやり取りされたんでしょう。

モデルを雇うこともないだろうから、映っている2名の隊員は現役のパイロットなんだろう、とか考えちゃいます。

記事が気になるなぁ~空井の独占インタビュー読みたい!










# by narimi1020 | 2022-12-14 17:48 | 一般文芸*お仕事 | Comments(0)

「我ら荒野の七重奏(セプテット)」

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「我ら荒野の七重奏(セプテット)」
加納朋子(かのうともこ) 作 / ノグチユミコ 装画
集英社(2016年) 単行本(ソフトカバー) 1500円
294ページ

*子どもの気に入り度*★★★★★

*ふりがな状況*
「吹奏楽部の活動には様々な品が必要となる。譜面台や教本、デジタルメトロノームなどは学校御用達(ごようたし)の地元の楽器店に一括で注文し、支払いも済ませてある。スワプは楽器と一緒にケースに入っていた物だが、いつからそこに入っているかも不明の恐ろしく不潔な感じの代物(しろもの)だった。これも個人用の物を買わねばならない。パーツによって複数のスワプを使い分けることになる。」(P54より)



「我ら荒野の七重奏(セプテット)」_b0334846_21521597.jpg*あらすじ*
陽子はバリバリのキャリアウーマンであり、母でもある。最愛の息子の陽介が中学に進学して吹奏楽部に入部し、陽子は吹部の保護者会というの嵐の中に突入することになる。陽介以外に興味のない陽子は、仕事を理由に極力保護者会の仕事から逃げていたが、陽子をよく知る友人に嵌められて?参加するようになった。そこで陽子は保護者会の中での派閥、予想外の負担、指導者の力量を知る。陽介のためなら即、燃え上がる猛獣陽子は、ブルドーザーの如く保護者会に突っ込んでいく。



*補足*
「七人の敵がいる」(2012年にドラマ化されています)の続編です。どのお母さんも、自身の子どもに楽しんで演奏してもらいたいだけなんですが、愛が強すぎるせいか暴走してしまう方がおられるようで。。。ここでは女帝エガテリーナ(江賀さん)が自分を城主とした牙城を築き上げようとしていました。そんな状況を黙って見ているような陽子ではありません。強い陽子を頼る人、慕う人が集まり戦争勃発!苦戦しつつも勝利していく様はなかなか痛快です。子どもたちは純粋にコンクールや定期演奏会に向けて頑張っていて微笑ましい。大人の世界はこんなにドロドロしているのに~。しかし吹奏楽部の役員の仕事量の多さに驚きです!お金がかかることもそうですが、親の方にも色々と覚悟が必要ですね。



*子どもの反応*
次女(高2)が読みました。次女も希望していた楽器のパートになれなかった経緯があるので、共感するところはあったかな。面白かったそうです。








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山田陽子が初登場する「七人の敵がいる」(2010年)。

小学校のPTAが舞台で、七重奏のときに比べ、陽子の牙は鋭く、剥き出しの状態です。

というよりこの経験があって、ちょっと丸くなったのかな?

子ども用の選書としてはリストには入れませんでしたが親が読むとなかなか面白いです。


最近やっとPTAが任意加入だと認識されるようになりましたね。しかし10年以上も前にこんな本が書かれていたとは!

ドラマ画像を拝見しました。陽子役は真琴つばささん!ピッタリ!

美しいところも、強そうなところも、高身長なところ、まさに陽子です!見てみたいな~。



  







# by narimi1020 | 2022-07-11 14:21 | 一般文芸*家族・人間関係 | Comments(0)

「六月の輝き」

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「六月の輝き」
乾ルカ(いぬいるか) 作 / くまおり純 装画
集英社(2011年) 単行本(ソフトカバー) ※絶版
248ページ
集英社文庫(2014年) 550円 280ページ

*子どもの気に入り度*★★★★

*ふりがな状況*
「私はなにも応(こた)えなかった。教室の中を満たす沈黙は月光の色に染まっていった。そうだ、私も美耶に言わなかった。美耶が一番好きな言葉を教えなかったように、私もあのとき秘密にしたのだ。美耶の手があったからこそ、私も耐えられたことを。」




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*あらすじ*
活発な美奈子と大人しくて優しい性格の美耶は、家が隣同士の幼馴染だ。二人にとってお互いは特別な存在で、いつでも一緒にいた。しかし小学生の時に、美耶の持つ特殊な能力、他人の怪我や病気を癒せる力あることが明るみになり、二人の関係は変化していく。行き違いのせいで、自分の父親を美耶に救ってもらえなかった美奈子は、美耶を憎むことで自分を持ちこたえさせるようになった。どんな目に遭わされても美奈子を大切に思う美耶。「元に戻せる力」で怪我や病気から元の体に戻せても、一旦壊れてしまった絆は元に戻せないのか――。


*補足*
小学生から成人までの時間の流れがあります。美奈子をはじめ、同級生や美耶の母親、チンピラの男、同室の入院中の男性など、色んな視点からの語りで美耶と美奈子の関係が描かれています。お互い想い合っているのにすれ違ってしまう。。個人的に、美耶の能力の本来の性質を知っている美奈子が、あそこまで美耶を追い詰めるのがちょっと理解できませんでした。ブランコでのことが美奈子にとって最大の美耶の裏切りだったんでしょうか。。。けなげな美耶がいじらしいです。


*子どもの反応*
三女(中3)が読みました。食いつき良かったです。面白かったそうです。





文庫版はこちら。

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シューケット焼きました。

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シュー生地自体が久々だったため、二回目にして成功。小さいのでぱくぱくいっちゃいますね~。









# by narimi1020 | 2022-05-31 17:56 | 一般文芸*家族・人間関係 | Comments(0)

「アーモンド」

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「アーモンド」
ソン・ウォンピョン 作 / 矢嶋暁子 訳 
祥伝社(2019年) 単行本(ハードカバー) 1600円
267ページ

*子どもの気に入り度*★★★★

*ふりがな状況*
「外部から刺激があると、アーモンドに赤信号が灯(とも)る。刺激の性質によって、あなたは恐怖を覚えたり気持ち悪さを感じたりして、そこから好きとか嫌いとかの感情が生まれる。ところが僕の頭の中のアーモンドは、どこかが壊れているみたいなのだ。刺激が与えられても、赤信号がうまく灯らない。」(P29より)



「アーモンド」_b0334846_16251397.jpg*あらすじ*
僕は感情を持つことができない。頭の中のアーモンド(扁桃体)が壊れているせいだ。ぼくは母さんとばあちゃんと中古書店を営みながら三人で暮らしていた。母さんは、僕が学校などで困ることがないように、人に対する反応の仕方や、感情とはどういったものなのかを根気よく教えてくれた。ばあちゃんは、僕のことを”世界で一番かわいい怪物”だと言ってくれた。クリスマスイブの日、母さんとばあちゃんが知らない男の人に殺された。僕は立って見ているだけだった。

ゴニという男の子が転校してきた。彼は僕に悪い言葉を浴びせてきたけど、僕が無反応なのが気に入らないらしく、僕をむちゃくちゃに殴ったりした。いつも感情というものを爆発させている彼は、よく僕に会いに来た。僕はいつも彼を受け入れたし、僕もゴニに会いに行った。ゴニは僕の友達だ。だから僕はゴニを悪い連中のところから連れ戻そうと思ったんだ――。



*補足*
感情を持たないが愛情をたっぷりもらって育った主人公のユンジェ。愛されることを知らないまま育ち、人より激しい心情を持っているゴニ。二人は性別以外は何もかもが正反対です。だからでしょうか、時が経つにつれて二人の距離は縮まっていきます。ユンジェは明らかにゴニからの何らかの刺激を受けていますね。少しずつ、ユンジェ自身が変わろうとしているのが分かります。そしてもう一人の友達のドラ。彼女がユンジェのアーモンドを動かしたのは間違いありません。ユンジェの一人称で語られているため、こういった障碍を持つ人の立場になって見ることができ、理解を深める手助けになるでしょう。感情がない→喜怒哀楽がないであって、痛みは感じるし、食べたい、何らかのことがしたい、などの欲求はある。。。?ユンジェが母さんやばあちゃんなど、周りの皆が何をどう感じていたのかを知りたいと思ってるところに胸を打たれます。2020年度本屋大賞翻訳小説本部門第一位。


*子どもの反応*
次女(中3)が読みました。この本を友だちも読んでいたそうです。時間はかかりましたが読了。面白かったと言っていました。








卵白消費にショコラフィナンシェを焼きました。

スティック型はかっこよく見えていいですね~。


「アーモンド」_b0334846_17121839.jpg

















Bココアと純ココアの割合は1:1にしました。





# by narimi1020 | 2022-05-19 17:21 | YA*男の子の話 | Comments(0)